7.小満

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7.小満

 雨あがり傘をたたみて花菖蒲  花菖蒲飛んでいくのは夜にして  蓮と亀ものがたりのできそうな  チャーシュー麺食べれぬ年と成り果てぬ  なつかしき前衛芸術家の眠りしか  けふはまた紫陽花の会目を細め  父の名で呼ばれうれしき夏楓  ひなげしと言えど何やら妖艶な  渡し舟目線下がりぬ夏の川  短夜の電車道の別れかな  暮れるまで咲いているから覚えてて  暑い頭ひんやりするまで選り好む  発電所見え隠れして夏木立  メリザンド朝焼け見遣る小満や  夏暁や水の中にも動くもの  サボテンは植物のねこ日向好き  梅雨間近つつじに別れとありがとう  雨やめば恋を探しに出かけよう  紫陽花の浴衣の似合う近所の子  鉄橋を夏風渡り紫陽花へ  トマト齧る少女の腕の日焼けかな  夏の陽のあたしの中の黒いもの
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