晴れの日、靴職人は跪く

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 かえすがえすも素晴らしい人だと思う。 「俺は」  頬に手を添えられて囁かれた。 「晴恵を粗末に扱うなんて、絶対にしない」  晴恵は真っ赤になった。  彼がベッドの中でどれだけ……。  彼女の気持ちを知ってか知らずか。 「晴恵はまだ服が足りないだろう? 今回は一週間分だけしか買ってないからな」 「滅相もないっ」  今回プレゼントされた服はどれもセットアップのものばかり。  同じ色と素材のもの、同じ色で異素材や色も素材も異なるもの。  パンツもスカートもあり、組み合わせを考えれば一年中着回せそうだ。 「素敵な服ばかりだし、気に入った服ばかり着回してしまうから、十分」 「……まあ、いいか。他のデザイナー達に頼むのはまた別の機会でも」  恋人の言葉を、晴恵は全力で聞かないふりをしようと思った。  智恭はスケジュールを話してくれた。 「俺は一足仕上げると大抵二・三週間は休暇にしている」  一足仕上げるのに少なくとも十日以上、場合によっては一か月以上かかる。  休暇は他の靴工房に赴いて教えを乞うたり、以前の顧客のところへ自分や祖父が作った靴のメンテナンスに出かけると。
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