晴れの日、靴職人は跪く

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「晴恵。俺がアンタの靴を一生作る。他の靴なんて履かせない」  低い声には嫉妬が混じっている、気がする。 「俺達の間に生まれる子の靴もだ」  心臓が高鳴っているのが聞こえてしまっているかもしれない。 「それってプロポーズ?」    返事の代わりに恭しく晴恵の片足を持ち上げると甲にキスをした。  唇をつけたまま晴恵を見上げてくる。 「一生かけて、俺を惚れさせた責任を取ってもらう」  こんな責任だったら、死ぬまでとりたい。 「取る!」 「よし」  檜山がにっこりと笑う。  見惚れていると、彼は立ち上がり晴恵を横抱きにした。  晴恵はうっとりと彼の首に腕を回した。 「なあ」 「うん?」   「『トモの花嫁のウエディングドレスをぜひ作りたい!』っていうデザイナーと、『だったらハネムーンはぜひ別荘に来て欲しい』って奴がいるんだが」  これも『ブツブツコウカン』の一環なのだろう。 「もちろん、晴恵の好きなデザイナーと旅行先を選んでくれ」  慌てる恋人の唇を晴恵は優しく噛んだ。 「智恭の靴が素晴らしいのはわかっているけど、貴方のクライアントさん達、気前良すぎない?」 「……俺もそう思う」 Fin
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