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#2 封筒
〝山崎春日〟と書いて〝ヤマサキハルカ〟と読む、この名前を、今まで何度間違えられてきたことだろう。
ヤマザキとか、ハルヒとかカスガとか、子どもの頃から日常茶飯事だった。
だからこそ〝野川〟という間違えられにくい苗字でいた5年間は、こうした訂正をすることもなかった。
ただ、学生結婚で、入社した時には既に〝野川〟だったために、今日からは今までのツケを払うかのごとく、面倒なやり取りが待っていることだろう。
現に、出社から3時間経った正午現在、訂正した回数は18回に上っている。
私の敬愛するミステリーやサスペンスの物語なら、こういう人生の転機に差し当たって、何か事件が起きたり巻き込まれたりするけれど、現実は平々凡々。
不倫だ何だと泥沼の末に離婚したわけでもないし、大幅に人生が変わることもない。
渋滞に巻き込まれながら車を走らせ、1階のカフェでミルクティーを買い、定時まできっちり仕事をして帰る、ありふれた日常に、少し気疲れする要素がプラスされただけ。
こんなちっぽけな出来事しかないのが、残念ながら私の人生なのだ。
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