#2 封筒

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「あ、そういえば…」  ふと思い出し、平野から受け取った封筒を取り出す。  彼女は決して私の逆鱗に触れるためではなく、これを届けるために経理部まで足を運んだのだ。  本人は急いで来たと主張していたが、封筒の端についているコーヒーらしき黒っぽいシミを見るに、一息入れてから来たのだろう。  営業部の横のカフェスペースで駄弁っている彼女の姿は、もはや社内あるあるだ。  訂正の連発に加え、今日に限って計算の合わない案件がいくつも出てきて疲弊したため、後回しにしていたけれど、急ぎの用事でも困るし、お昼を食べる前に読んでおこうと思い立ったのだ。  会社の備品の封筒だから、社内からなのは間違いないけど、領収書の類なら既にデジタル化しているから、何か特別な連絡なのかもしれない。
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