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そうして、1週間後、突然辞令が出た。
中村 綾子 再雇用
第3営業部2課へ配属する
真中 裕美
第3営業部2課の任を解き
総務部社長付き秘書へ配属する
は!?
私が、秘書!?
中村さんは分かる。
3年前、双子の出産を機に退職したベテランの営業事務さん。
子供を保育園に預けられるようになったから、復職するのかな?
でも、私が秘書!?
っていうか、社長、全部自分でやるから秘書はいらないって総務の同期が言ってたのに。
これ、私のため?
1週間待てって、こういうこと?
私は、訳が分からないまま、残務整理に追われ、それから1週間で総務に籍を移した。
「おはようございます。真中 裕美です。分からないことだらけですけど、頑張りますので、よろしくお願いします」
私は総務部の朝礼で深々と頭を下げて挨拶をする。
右に総務部長、左に社長という足がすくみそうな立ち位置で。
朝礼終了後、早速、社長室に呼ばれた。
「真中、よく来たな。これから、よろしくな」
社長はニッと口角を上げて笑う。
「じゃ、とりあえず、これ」
社長室の隅に私用に用意されたと思われる机に、社長は5冊の本を積み上げた。
私は、社長が何を言いたいのか分からなくて首をかしげる。
「うちの社史と会社概要。全部覚えろ」
えっ、これ全部!?
「俺と一緒に出かけた時、誰に何を聞かれても、この程度のことは秘書が答えられないと困る」
まぁ、確かにそう……かもしれない。
「ま、俺がいる時なら教えてやるから、分からないことはいつでも聞けよ」
そっか。
社長はこれを全て覚えてるんだ。
じゃあ、私にも覚えられないわけじゃない。
「はい」
私は返事をすると、その席に座る。
今日から、私は社長秘書。
社長に迷惑をかけないように頑張らないとね。
私は、ノートと付箋を用意して、秘書としての1日目を歩み出した。
─── Fin. ───
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