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紅羽高校では、部の活動報告を週に一回、顧問に提出することになっている。女子バスケ部には顧問として、国語担当の福本先生がいる。実際の年齢は知らないが真っ白な髪で「おじいちゃん」と呼びたくなるような風体だ。本人も運動は苦手であることを認めていて、試合が絡むときぐらいしか顔も出してくれない。
「鶴屋さんのときもそうだったんですが、練習メニューもスタメン選出も杉浦さんにお任せしますよ」
活動報告日誌を提出した後、笑い皺を浮かべながら福本先生は言った。
「僕はバスケのことなんて素人でね、ルールはトラベリングとオフサイドぐらいしかわからないんだ」
『オフサイド』はサッカーの用語です、とは言わなかった。
「はぁ……いや、でも、私、今までずっと控えで、どうしていけばいいのか」
「なぁに。まだ若いんだから大丈夫。『虎穴に入らずんば虎子を得ず』ですよ」
「え……」
福本先生が言ったことわざか漢文か何かもわからない言葉は、私をただただ混乱させた。
「まずは、とりあえずやってみることだね。今までやってこなかったことをやる、それは杉浦さんの人生に大きな意味を与えると思いますよ」
先生の言葉を聞きながら、私はこれからの日々が私にとって大きな意味を持つことなどあるのか、まだ確信が持てなかった。
ただ、グズグズしている暇がないこともまたわかっていた。二学期になれば、もう新人戦が始まるのだ。そこまでに新しいチームを軌道に載せなければいけない。
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