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 ブザーの音が響いた。  第四クォーターの終了、つまりは試合の終了を告げる音だった。 「76対44で、坂岡南の勝利」 「ありがとうございました!」  三十二点もの差をつけられ、私たち紅羽高校は敗退した。  六月の総体予選で県大会準優勝だったチームが、この秋の新人戦では緒戦敗退、しかも相手は強豪校なんかではなく、去年は二十点差をつけてウチが勝った相手だった。 「マジありえない。何なのこの試合!」  試合後、苛立った口調で楓音が吐き捨てるように言うと、カバンを肩からナナメにかけて会場から去っていった。  前半から楓音が徹底的にマークされてボールが通らないようにされていた。それでも楓音はうまくマークを外してくれていたのだけど、私たちがそこにパスを通すタイミングを見誤ることが多く、パスミスだらけだった。ガードの恵梨香との呼吸も全く合っておらず、結局、楓音の個人スキルでの得点以外はほとんどチャンスらしいチャンスは来なかった。 「私の、責任だね……。夏休み以降、全然チームをまとめてこれなかった」  楓音以外の残った部員の前で私は頭を下げた。  私がキャプテンになってから、出来る限り練習メニューを考えて、チームを強くしていこうとしてきた。しかし、強くなるどころか、朝香先輩たちがいたチームから見れば圧倒的に弱くなってしまった。 「ぶっちゃけ、杉浦さんってこの何カ月か、何をやってたんですか?」  一年の滝川彩音(たきがわあやね)が言った。一学年下ではあるけれど、今日、スタメンで出場してもらった子だ。気が強い子で、いつも言葉がとげとげしいところがある。 「……何をやってた、ってどういう意味?」 「言葉のまんまです。練習メニューは鶴屋さんたち時代のものだし、スキルとかは奥井さんが教えてくれて、ゲームメイクは……うまくはいかなかったけど松田さん。じゃあ、杉浦さんって何をしてるんですか?」  痛かった。胸の真ん中にナイフを刺されたような気分だった。もちろん、ナイフなんて刺さっていない。しかし、痛かった。
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