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その翌日の昼休み、私は朝香先輩に呼び出されて、中庭に来ていた。ここはいくつものベンチがあり、あちこちに生徒たちが座っている。そのうちの1つのベンチに朝香先輩は座って待っていた。
「お、目が腫れ気味じゃん。寝れなかったとか?」
と朝香先輩が言ってきた。寝れなかった、そのとおりなので私は笑うこともできなかった。
横に座るように促され、私はベンチに座った。向こう側には体育館が見えた。
「私がキャプテンじゃダメなのかなって思うんです。私なんかよりうまい楓音とかゲームメイクできる恵梨香とか」
「奥井か松田ねぇ……。それじゃあ……今までと同じだよね?」
「え?」
「杉浦さぁ……私がキャプテンになったばっかりの頃、覚えてる?」
朝香先輩は私の顔を覗き込むように見てきた。
「もちろん覚えてます。あの頃、私、すっごい怒られてばっかりで。毎日のように『やる気ないなら帰っていいよ?』とか言われてましたから」
練習にもついていけず、私語までしていた私はよく朝香先輩に怒られていた。体育館の中がしんと静まり返ってしまい、私はただただ怯えていた。
「あの頃の私、怖かったよね?」
「はい」
「即答するか、そこ」
「あ、すいません」
「いや、いいんだけどさ。やっぱり怖かったよねぇ」
朝香先輩は笑ってくれた。怖いことを認めたことは怒っていないらしい。
「厳しいだけじゃダメだなって私も途中でやっと気づいたんだよ」
そう言うと、朝香先輩は葉擦れの音がする木々を見上げた。
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