第1話 序

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そう、男達は敗軍の殿(しんがり)を務めているのである。 「ああ..もっと愉しみたかったなぁ」 やがて國軍は解体され、皿帝(べいてい)の傀儡になる。 そうすれば、自分はどう処されるのか。 果たして一般市民として生きていけるだろうか。 そんな思考を反芻するうち、履帯が地面を掴む音 ー 奴らが、姿を現わす。 肉眼では豆粒ほどに見えるが、光学機器を覗くと その全貌が露わとなった。 鈍色に光る車体、聳そそり立つ砲身。 皿帝べいていの塹壕装甲車(せんしゃ)S60、兵員輸送車S2の混成部隊が丘陵を越えてくる。 60台以上の車輌が一箇所に殺到する。 S60は6台一列になり、先鋒となって進んでくる。 その後にS2が続いた。 男達が潜む丘まで700(メートル)の所で、突如轟音が響き渡った。 ここからは見えなかったが、味方の誰かが梱包爆薬を起爆したのだ。 それが合図だった。 爆破を喚び水として、一斉に射撃を始める。 なけなしの弾を撃ち込む。 10秒もせぬうちに弾倉が空になる。 装甲車は潜望鏡や視察窓、特に車長のいる展望塔(キューポラ)を集中して狙う。 男の射撃によって左側2輌の動きが止まる。
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