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花火の夜、彼との接吻
「きれいだね」
「ああ、すごくきれいだ」
彼は私の横顔を見ながらそう言う。それじゃあ私にきれいって言ってるみたいじゃん。
そう考え始めると少し頬が赤らむ。それもこれもこの暑さのせいにしてしまいたい。
私たちは今人混みの喧騒の中で花火を見ている。私がきれいだといった花火は終わりのほうにだけよく打ち上げられ、水面まで垂れさがる枝垂桜のような、柳のようなそんな花火だ。これを見るとああ、もうすぐ花火大会も終わるんだなと少し切なくもなる。
そんなことを考えていると私の手に彼の手が少し触れる。この瞬間私の胸がトクンとなるのが分かった。花火がなかったら彼に聞こえていたかもしれない。
それから少しすると私の小さな手は彼の大きな手で覆われた。そのまま彼は私の手を壊さないようにやさしく握る。私の胸の鼓動はこれでもかと激しくなった。
花火があっても彼に聞こえてしまっているのではないかというほど高鳴る私の胸に私は耳まで沸騰した血液がいきわたるのを感じた。
彼は今どんな顔をしているのだろうか。気になった私は彼の横顔を見つめる。
彼の頬から耳にかけては暑さのせいか花火に様に真っ赤に染まっていた。
そんな彼の横顔に見惚れていると、彼がどうしたの?と言いたそうな顔でこちらを向いた。彼の瞳は吸い込まれそうなほど大きく、彼の瞳から目が離せなくなる。
少しの沈黙が流れた後、彼の顔が少しずつ近づいてくる。私は目を瞑り彼に身を任せた。彼の柔らかい唇の感触が私の唇に伝わってくる。
彼の唇が私から離れた後私は目を開けた。
目を開けるとそこには照れくさそうに笑う彼と満開の花火がとても輝いていた。
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