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「――はあ。また佐藤さんのメシ食いてえなあ」
いつもの朝食の風景。食パンにバターを塗りながら、翔太がぼやく。
「父さんに作ってもらえば?」
優子が言うと、「食パンだって焦がすんだぞ。できるわけねえじゃん」翔太は笑う。
「お父さんはカリカリが好きなんだ。あえて焼いているんだぞ」
正樹はそんなことを言いながら、真っ黒な塊をかじっていた。
「私、先に行くから。鍵忘れないでね」
優子が家を出ようとすると、「あ、優子」と正樹が呼び止める。
「何? 父さん」振り返る優子に、
「気を付けてな。いってらっしゃい」
正樹は何気ない感じで言った。
「うん。いってきます」
優子は玄関のドアを開いた。今日もかけがえのない平凡な一日が始まる。
ふと見ると、お隣の旦那さんが首輪をしていたが、それは見なかったことにした。
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