エピローグ

1/1
98人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ

エピローグ

 コルドは赤子を貰った後、そのまま誰に何も言わず、すぐに城を去った。  コルドと赤子、2人暮らすのに十分すぎるほどの金をコルドはもらっていた。コルドはその1部を故郷に送り、もう故郷へは帰らないこと、仕送りは最後になることを手紙に綴った。  残った金と赤子を抱えたコルドは、ファルの願い通り、そのままファルの故郷へと向かった。  長い旅路をゆっくりと歩く。ファルの故郷に着いた頃には赤子は立てるようになり、簡単な言葉を話せるくらいにはなっていた。  ようやくついたファルの故郷の村で、コルドは村の外れの小さな空き家に住むことにした。  周囲の人間たちは当然現れたコルドと子供の存在を警戒したものの、コルドがこの場所は祖母の故郷というと、コルド達を歓迎してくれた。  ファルの故郷に暮らして、数年の時が経った。  子供は幼いながらも仕事をよく手伝い、顔もコルドにというよりファルに似てきたように見える。  そんな折、村の重役たちが数名、女と子供を引き連れコルドの元に訪れた。  重役たちは女と子供を流行病で父親を亡くし、母1人子2人になった者だと紹介し、その母親と再婚してはどうか? と重役たちは言った。  重役はコルドの隣でひとり遊びをしていた子供を指さし、その子にも母親は必要だ、と言った。  コルドは少し悩み、夫に先立たれた母親を娶ることにした。そうしてコルドは一気に1人から3人の子の父になった。  更に数年だった。  最初はぎこちなかった夫婦生活は仕事や子供の世話をしているうちに解消し、今は互いに尊重しあえる仲間になっていた。  コルドの子供も、妻の子供も成長し、このまま親子5人で過ごしていくと思っていた時、コルドの子供がコルドに言った。  城で、働きたいと――、  城に出稼ぎのため、毎年この村に立ち寄る者からあの城のことを聞いたのだろう。  その者について行き、城で働きに行きたいとコルドの子供は妻とコルドに言った。  妻は反対した。血の繋がらないコルドの子供も自分の子供と同じように愛していた母親にとって、コルドの子供が離れることは考えられなかったのだろう。  反対する妻と違い、コルドは子供に城で働くことを許した。  その代わり、必ずこの村に帰ってくることを条件にした。 子供が出発する日、コルドは自分の首飾りを子供にあげた。 子供には首飾りの事に着いて詳しく言うことはなく、不幸を退けるお守りと言った。  城に向かう日、コルドの子供は血の繋がってない弟たち、母親、コルドに見送られ城に向かった。  コルドも首飾りを子供に挙げ、子供の無事を祈った。  妻と子供が家に戻っても、コルドは自身の子供が歩いた道を、子供と共にこの村に来た過去の自分を思い返した。  去年よりも皺の増えた手を見つめる。その手の皺を眺めながら、コルドは子供の城での生活が少しでも良くなるようにと神に祈った。      
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!