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不釣り合いな衣装
それから、コルドはさまざまなところに連れてこられた。
湯屋で汚れた体を清められ、髪を整えられる。
少し伸びていた髪は切られるのではなく毛先をほんの少し切るだけで終わった。
肩につくくらいになった髪を匂い油で艶を出させられる。その匂いに顔をしかめ逃げるように顔を背けても伸びた髪がまとわりついた。
服も今着ている城内の服から着たことのない豪勢な服装に着替えさせられる。
今まで着ていた質素な服装ではない。
ところどころに見たこともない刺繡が施され、少し動けばほつれて自分が裸になってしまうのではと不安になってしまう。
こんな自分に不釣り合いな格好を着させられ、どうすればいいのかと棒立ちになっているコルドに王付き兵が言う。
「お似合いです、ベルディ―ト様。育ちは違えど王の血の高貴さは失っておられなかった。王も、貴方様のそのお姿を見ればお喜びになるでしょう」
口だけの世辞があまりにもいたたまれず、コルドは目をそらした。
そらした先の視線に、鏡の中にうつる自分がいた。
自分の群青の髪と菜花の瞳。その姿の自分が自分を見つめている。
どう見ても、似合わない。これは自分じゃない。見世物の動物だ。
「行きましょう。王がお待ちです」
「……」
コルドは鏡に映る自分から視線を映し、王付き兵に移した。
固く閉じられた表情。彼らは、コルドに何を求めているのか。
それがわからないまま、コルドは王付き兵の元に向かった。
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