刹那のターニングポイント(Jの物語:番外編その12)-完-

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   浜田は浜田でちょっと居心地が悪い。さっきはつい声を張り上げた。そして抱き上げた陽子はあまりにもほっそりとしていた。まるで…… 『奥さん、栄養状態が良くなかったようですね』  陽子から目を逸らすように、通りに目をやる。 「タクシー、いるといいな」  ハッとした。そうだ、タクシーに乗ったらまっすぐに家に帰ってしまう。自分のことくらい分かる。それでなくても後ろめたいのに。陽子は立ち止まってしまった。 『帰りたくないの』 そんな言葉を言ってみたい…… 一瞬陽子を掴んだ小さな欲望。 「どうした?」 「浜ちゃん……私……」 「まだ残る気だったんだろう? 時間大丈夫ってこと?」 「……今日はヘルパーさんに……泊まってもらうことになってるの。……ちょっと一息つきたくて」  その後に続く無言。浜田もいつもと違う陽子の頼りなさを感じていた。どうしていいのか分からない、とでもいうような。 「タクシー捉まえてくるよ」  外に出て行くその背中を見ながらため息が出た。 (呆れたわよね。そりゃそうよ……実の母親の面倒見るのを嫌がってる娘なんて)  そう間を空けずに浜田は戻ってきた。 「すぐ捉まったよ。行こう」  素直について行く。やっぱり家に帰るのだ、今年のクリスマスも自分には縁がなかった。  外に光るイルミネーションが遠い世界のように見える。じわっとその光がにじんで見える。  
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