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奥ではなく、真ん中あたりのブースに入る。
「クリスマスだからさ、それっぽいカップルってのになろ」
上着を脱いでおしぼりで手を拭きながら浜田はおどけるように言った。
「浜ちゃん相手に?」
「俺だからいいんだよ。後に何も残んないだろ? 安牌、安牌。お互いにクリスマス1人で過ごすより1人が2人って方がよかないか?」
そういう提案なら心が楽だ。
「分かった、それっぽいカップルね」
「そこ強調するなよ! それでなくたってこういうの慣れてないのに」
「そうなの? 誰彼構わず口説いてんのかと思ってた」
「俺ってどんだけの存在なの?」
笑っている浜田だから心が軽くなる。なんでも言っていいような気がする。
「毎年1人ってこと?」
「それを言うならお互い様」
「あら、残念! 私去年は1人じゃなかったし」
自分で言っておきながら途端に惨めな気持ちになる。
『いつも俺よりお母さんを取るんだな』
最後のデートになった日の相手の言葉。
『しょうがないじゃない! 母さんを1人で置いとくなんて出来ないんだから!』
『だからさ、いい施設に入れてやるって』
「あ、傷つく! なんだよ、そういう時は『そうね』って言えよ」
浜田が大袈裟にしょぼくれた顔をする。思い出したあの夜がかき消えて吹き出した。
「分かったわ、『そうね、お互い様』」
「余計傷ついた」
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