刹那のターニングポイント(Jの物語:番外編その12)-完-

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  「この里芋の煮っころがし、美味しい!」 「俺の作った方が絶対美味い!」 「え、料理するの? そうか、してくれる人いないもんね」 「また抉るの? クリスマスなのに俺、ズタズタだー。あのね、独身男を舐めるなよ。ある程度のもんは作れんの。めんどくさいけど。インスタントばっかりって飽きるだろ?」 「お正月は? 年越し蕎麦とか」 「あれって分かんないな、どうして蕎麦食わなきゃなんないのか。そんなの食わなくたって年は普通に明けるって。第一、今日が明日に変わるだけだろ? ま、会社が休みになるのは有難いけどさ、正月番組なんて面白くもなんともないし」 「……なに作るの?」 「休みなのに? まっさかぁ! そうだな……だいたい毎年カップ麺かな、ポットそばに置いときゃいいし。で、だいたい寝てる」 「どこかに出かけたりしないの?」 「いや、勘弁! 寝転がってる方がマシ」 「実家に行くとか」  浜田の目つきがちょっと変わる。箸を置いた。 「なに? 取り調べ? なんかの調査?」 「ちがう、違うわよ、ただの好奇心。男の人のお正月って言うのを知りたいだけ」  箸を取った浜田は今度は唐揚げを口に突っ込んだ。 「あのね、独身男にそーいうの、聞かないで。独り身を実感しちゃうだろ?」  またあの笑顔。話を躱していく姿が……日頃の自分に重なる。 『ええ、帰っちゃうの? 今日飲みに行こうって言ってたじゃない』 『ごめんねー、ヘルパーさん帰っちゃうから』 『たまには息抜きした方がいいわよ、そのままお局様になっちゃうつもり?』 『失礼じゃないの? そういう言い方!』  そう言って笑った…… 自分にはそんな未来が来ると分かっているのに。  
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