刹那のターニングポイント(Jの物語:番外編その12)-完-

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   可愛かった沙都子(さとこ)が生活に疲れ、歪んだ顔で浜田に頼む。 『ひろ、お願い、洗濯』 『レポート明日までって知ってんだろ』 『でも』 『明日はこのシャツでいい』 『でもタオル』 『文句言う暇があったら自分で洗えよ!』 『私、これからバイトなんだよ!?』 (ああ、またやってる……)  夢の中でさえ、そんなことを思う。あそこにいるろくでもない『ひろ』に憐れみさえ感じる。そしてこの後の展開に怯える。  携帯が鳴る……低く、高く。うるさかった。とにかくうるさくてうるさくて……とろとろと手が動く。 『だれ』 『ひろ、……おねが、むかえにきて』 『冗談だろ、俺、ねてる』 『切らないで! きら、ないで、具合わるいの、おねがい』  時計を見る、何も考えずに。いや、違う。自分のことだけ考えて。 『どこ』 『バイト、早退したの、電車、10分で着くから』 『早退?』  その言葉だけが反響した。 『その分俺に働けってか』 『ひろ、おね』 『分かったよ! 行きゃいいんだろっ』  そして携帯を切った。その携帯を握ったまま、また眠りに落ちる…… 『おれだってつかれてるんだ』  そう呟いて。 (ばかやろー! 行けよっ、寝るな、寝るな、起きろっ)  何度この夢の中で叫んだか。いい加減に生きている『ひろ』を見続けるのも罰なのだろうか。  
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