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コバルトファイヤードラゴンは人間が足を踏み入れない高い山に住んでいて、滅多に山を下りてこないと言われている。大きな体躯に大きな翼を持ち、その飛ぶ様はとても優雅で美しい。
にもかかわらず攻撃的で、放っておけば町がひとつ吹き飛ぶほどの威力の火炎を放つ。
なぜ滅多に姿を現さないのにいろいろな情報があるかといえば、何十年に一度姿を現し人間たちを恐怖に陥れるからである。その度に伝承され、今日に至るのだ。
……と、行きずりの勇者に聞いた話。
時には勇者と魔法使いが一致団結し討伐に至ったり、時には町をいくつか焼き尽くされたり、とこれといった討伐方法は確立されていない。
一説によると、終の住処を探すために彷徨っているのだとか。
……と、こちらは行きずりの魔法使いに聞いた。
「それなのに何でママはコバルトファイヤードラゴンの肉が美味しいって知ってるの?」
「だってアタシ、食べたことあるもの」
「はあ?」
「爪や骨は装備や防具を作るのに最適だし、鱗は稀少な宝石として高値で取引される。そして肉は最高級といわれる究極の食材。誰もが憧れるドラゴンなのよ。ま、アタシが全部いただきますけどね。フンっ」
ドヤ顔で語られても困る。
っていうか、ママって何歳なの?
性別も年齢も不詳だなんて、ママの存在が謎すぎる。
「てなわけで、行くわよ、マリちゃん!」
「いやぁぁぁぁー!」
森の中にわたしの悲鳴がこだましつつ、ママはお構いなしにわたしを森の奥まで引っ張っていった。
時おりファイヤードラゴンの翼の風圧がブワッと森全体を揺らす。
逃げていく者、途中で倒れている者を視界の片隅に捉えつつ、わたしたちは一歩一歩ファイヤードラゴンに近づく。
……大丈夫か、わたし。
十三歳で一生を終えるかもしれない。
ああ、お父さんお母さん、親不孝なわたしを許してね。
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