へっぽこ勇者は伝説をつくる

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「うおぉぉぉぉぉぉーーーーー!」 魔法陣がコバルトファイヤードラゴンの眉間に届き、より一層輝きを増す。魔力弾魔法が発動し、その力を利用して二本の牛刀をなおも力いっぱい押し込んだ。 ギュワオォォォォーーーー 悲鳴のような空をつんざく音に顔をしかめる。 瞬間、コバルトファイヤードラゴンの動きがピタリと止まり当然それに合わせて翼も動きを止め、その身は地面に向かって落ちていった。 「マリちゃん、今よ!」 「えっ、あっ、でも抜けないっ」 わたしの牛刀はコバルトファイヤードラゴンの眉間にしっかりと刺さったまま、抜こうとしてもびくともしない。今、動きが止まっている間に喉を掻き切らないといけないのに。しかも私も一緒に落ちていくからやばい。焦る。 「ほんっとに、アンタ勇者向いてないわね」 ママはガハハと笑いながら腰に携えている牛刀をしゅっと投げてくる。 「貸してあげるからさっさと殺っちゃって」 さらりと残酷なことを言い放ち、自分は高みの見物とでもいうように腰に手を当てて落ちていくわたしを傍観中。 「ほら、早くしないと復活しちゃうわよ」 なんて笑いながら煽ってくるので、コバルトファイヤードラゴンさんごめんなさいと心の中で懺悔しながら一気に喉を掻き切ったのだった。 ちょうど地面に激突するのと同時だった。コバルトファイヤードラゴンの口から最後の足掻きとばかりに火炎が吐き出されたのだ。 「ちょ、待って待って、やばっ!」 完全にわたしの方向に火炎が飛んでくる。わたしはまだ牛刀を構えたまま空中を飛んでいる。こんな至近距離では方向転換は間に合わず避けられない。 もうダメと目を閉じたときだった。 ネックレスのチャームがキラリと光り、身代わりとばかりに火炎とぶつかる。 そしてパーンっという音と共にチャームは粉々に砕け散り、火炎を相殺した。 衝撃波はものすごく、わたしはそのまま吹き飛んでしまったけれど、その身はなぜかボフンという柔らかい何かにぶつかる。 「ほえっ?」 「まったく世話が焼けるわね、アンタ」 ママが呆れながらわたしを抱えてくれている。どうやらママの胸に飛び込んでしまったようだ。思った以上に柔らかいんですが、ママの胸。
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