少女は金網を登る

2/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 日本を分断するようにぐるりと地球一周するその金網は、どこにも切れ間無く存在していた。高さはおよそ八千メートル。ロケットや飛行機ならば越えられるけども、通常の方法では越える事のできない高さである。  金網の登場によって世界は混乱した。何せこれまで気軽に行き来していた道にも金網が張られてしまったのだ。登るにしても到底無理だし、迂回のしようもない。  もちろん人類は賢いので、早々に切断を試みた。だがありとあらゆる手段(鉱山を掘るバケットホイールエクスカベーターすら派遣した!)を用いたが、とうとう切断も破壊も叶わなかった。  どうしようもない、と諦める反面、それはそれで人間は順応していくものである。やがては誰も気にしなくなった。  だがある時衛星写真が捉えてしまったのだ。日本上空、金網のてっぺんになっている一つのリンゴの実を。  腐りもせず、枝もなく、ただ生り続ける不思議なリンゴ。その事に人類は強く興味を持った。実は何か貴重なリンゴなのでは? いやいや誰かの悪戯だ。悪戯にしたって、高度八千メートルにどうやって腐らないリンゴを置いたんだ、などなど侃々諤々。しかしとうとう結論は出なかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!