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2.因縁の対決
剣道の会場は、弘前市内の「青森県武道館」で行われる。競技は1泊した翌日から行われた。
初日、レイラらは順調に勝ち進み、ベスト8まで決めたところで次の日に持ち越された。ここまではまあ、予想ができた展開だ。
翌日の準々決勝では難なく勝ち上がったが、次の準決勝の相手は栃木代表だった。新人戦でアリスに勝ったあの宮本選手の所属しているチームだ。
そのチームもやはり宮本選手を大将に据えてきていた。こちらの大将はもちろんアリスだ。今からオーダー変更はできないのでこのまま行くしかない。審判に呼ばれ、両チームが並んで礼をした後、レイラはアリスに、
「アリス、力を抜いて行こう!」
と励ましたが、アリスは、
「ゥ…ウン…」
と何やらナーバスになっている。(苦手意識を持ってなければいいのだけれど…)アリスの大柄な身体が一回り小さく見えた気がした。
(ダメダメ、私までのまれてる…)先鋒が試合場に上がるよう言われたので、レイラは両手で頬を「バシッバシッ!」と叩き、「しゃあ!」と気合を入れてから竹刀を持った。
その自分の試合のことは実はよく覚えていない…。「面2本」を奪って試合が終わり、蹲踞をして下がって礼をした直後に意識が戻って来た感じで、それまでの試合中は、今戦っている相手の向こうにいた宮本選手に気が行ってしまい、全く集中できないでいた…。
なので自分の対戦相手の動きも見ずに、何とか勝ってしまったようだ…。(私がこれじゃダメじゃない…)
次の試合の次鋒が負け、中堅はかろうじて勝てたが、副将も惜しくも負けてしまい、勝負は大将戦にもつれ込んだ。
アリスの試合が始まった。いよいよ大将戦だ。
アリスを見ると、いつもの柔らかさがない…。緊張してる…?アリスは先日の新人戦のイメージを引きずっているのかなとレイラは思った。
「キェーー!」「オリャーー!」
アリスが上段に構える。いつものヒグマのような気迫が見られない。逆に宮本選手は以前見た時よりも余裕のある構えのように感じられた…。
アリスが先に仕掛けた。アリス得意の遠間からの飛び込みざまの「片手面」だ!
相手が普通の選手なら決まっていたかも知れない。しかし、相手は宮本選手だった。宮本選手は、頭を「ユラッ」と少し右に傾げたと思ったら、そのままの勢いで前に出、アリスの剣を肩に受けつつアリスの面に一撃を入れてきた。
カウンターとなったその面を受けたアリスは、そのまま前に突っ伏した格好で前に倒れてしまった。面金が床に「ガガガッ」と音を立てるほどの勢いで…。
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