3.帰県

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3.帰県

 1年目の団体戦はこうして準優勝で終わったが、誰もが納得のいく結果だったし、全国2位という成績も初めてだったので、充実したものだったとアリスは思った。  高知に戻るとアリスはそのまま1週間ほど入院することとなった。また、脳震とうも起こしていた可能性もあったため、頭部MRI検査も念のため行ったらしいが、特に問題はなかったようだ。  しかしレイラはアリスが無意識状態で戦っていた時の宮本選手の挙動が腑に落ちなかったので、アリスの見舞いがてら病室を訪ねた。  「アリス、宮本選手との試合の時さー、いったいどうなってたのよ?」 「ウン、実はね私もはっきり覚えてないの…。1本面を取られた後、気付いたら医務室で倒れていてレイラが横にいたのよ」  レイラは試合場で見たまんまの答えをアリスから聞き、一つの仮説を立ててみた。  宮本選手も私達と同じような能力を持っていて、相手の何らかの行動が読めるのではないだろうか。あの時アリスはたぶん、無意識のうちに戦っていた。宮本選手はアリスの意思か何かを察知して反撃しようとしたが、アリスはあの時無意識だった。宮本選手が何度か見せた防御反応は、「アリスが攻撃する」ということを感じ取ってのことかも知れない。  レイラは自分なりの考えをアリスに言ってみた。するとアリスは、 「レイラ、すごい!それ当たってるかもしれないよ。私その意識がない時ね、夢を見てたような気がするの。剣道の試合をしている夢…。だから時々「攻撃しなきゃ!」と思ったりもしたの。それを宮本選手は感じ取ったのかも知れないね」  レイラはそれを聞いて、 「何か今、すごく納得しちゃったよ!このことをサークルのみんなに話してみない?来年からの攻略になるよ、きっと」 「レイラ、そうだね!退院したら色々やってみようよ!あー、もう、早く剣道したいよ…」 「まだダメだよ、アリス。膝が治るまで動いては…」 …数日後、剣道サークル…  団体戦後は4回生は引退し、新キャプテンとしてアリスが就いた。レイラは副キャプテンだった。  キャプテン就任のあいさつの時、アリスは左足にサポーターをガチガチに巻いて固定し、松葉づえを使って前に出た。  挨拶が終わるとアリスは先日のレイラとの話を皆に話してみることにした。 「…私とレイラでそういう結論が出たんです。栃木の宮本選手対策として有効な情報として精査してみたいですがいかがでしょう?」 「ハイ!」 一人の先輩が手を挙げた。 「先輩どうぞ」 とアリスが指名すると、その先輩は、 「宮本選手はうちの最大のライバルと思って間違いありませんが、今うちにはその人に勝てる人材が二人もいます。逆に考えれば、これは最大のチャンスと思っていいと思います。このことはキャプテンと副キャプテンにお任せして思い切り研究して欲しいと思います」 と言うと、他のメンバーから、 「サンセーイ!」 と拍手が起きた。  
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