末姫 テス*

1/1
159人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ

末姫 テス*

18f5a057-506d-4464-936b-5dba942d2640 「お生まれになりました!」 「男か?!」 「元気な姫様です」 「女か…」 「少々問題がございます」 「どうでもいい。虚弱なら殺せ」 アリステ王国の王には正妃以外に、13人の妻妾がいた。 妻妾が産んだ王の子供は全部で22人。 私は正妃の子供だけど、王にとっては23人目の出涸らし姫。 今年で16歳。 生まれた時から氷の魔力を授かっていて、城の離れに幽閉された。 何をするか分からないという理由でね。 確かに自分でもそう思う。 どこか痛かったり風邪を引いたりすると、氷の魔力が暴走していたし。 護衛騎士の利き腕を凍らせてしまったこともあった。 こんなだから、怖がって誰も会いに来ない。 王でさえも。 「テス様。ご夕食をお持ちしました。毎日こんなもので申し訳ありません」 「ありがとう。気を使わせてしまってごめんね」 私専属のメイド、ユリはそんな私を唯一支えてくれる。 最初は色々悩んだりしたけど、もういいやと自分を納得させた。 幽閉されているけど、塔の半径2kmぐらいは監視付きで出歩ける。 魔力の制御を独学で覚えたからかな。 同情した監視役の心使いか……それとも怒らせないようにしたいのか。 どっちでもいいけど。 「うにゃーん」 最近やってくるトラ柄の子猫。 怪我を治療してから懐いてくれた。 「また来たの?今日はご飯食べてみる?」 スープの残りに水を入れたような味だから大丈夫だと思うの。 多分、ユリが使用人の食べ物を持ってきてくれている。 有るだけでもありがたいのよ。 お腹が空き過ぎて思わず食べた雑草は、苦くて食べられたものじゃなかったし。 そろそろ、城の外に出たいな。 こんな所に居たって死ぬのを待つだけ。 「テス様。王がお呼びです」 初めてユリとは別の使用人がやってきて、王の間へ通された。 「お前の嫁ぎ先が決まった。ドリスの獣王国だ。逃げたりしたらアリステ王国を危険に晒すと思えと王が仰せです」 王がいない王の間で、大臣らしいお爺ちゃんに言われる。 この城を出られるなら、なんでもいい。 「承りました。どこへでも参りましょう」 「テス様!なぜ承諾なんてなさったんです?!」 顔を真っ赤にして怒るユリ。 ドリス獣王国は建国して1000年の歴史がある。 王国には獣人と人間、亜人が住んでいて、獣人が治める国。 少数派の人間は獣人たちにとって食糧か奴隷だと言う噂。 「ついて来なくていいのよ。私1人でも」 「ついて行くに決まっています!」 何を言っても「行く!」と言い張るユリと一緒に、馬1頭を与えられてドリスへ向かう。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!