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末姫 テス*
「お生まれになりました!」
「男か?!」
「元気な姫様です」
「女か…」
「少々問題がございます」
「どうでもいい。虚弱なら殺せ」
アリステ王国の王には正妃以外に、13人の妻妾がいた。
妻妾が産んだ王の子供は全部で22人。
私は正妃の子供だけど、王にとっては23人目の出涸らし姫。
今年で16歳。
生まれた時から氷の魔力を授かっていて、城の離れに幽閉された。
何をするか分からないという理由でね。
確かに自分でもそう思う。
どこか痛かったり風邪を引いたりすると、氷の魔力が暴走していたし。
護衛騎士の利き腕を凍らせてしまったこともあった。
こんなだから、怖がって誰も会いに来ない。
王でさえも。
「テス様。ご夕食をお持ちしました。毎日こんなもので申し訳ありません」
「ありがとう。気を使わせてしまってごめんね」
私専属のメイド、ユリはそんな私を唯一支えてくれる。
最初は色々悩んだりしたけど、もういいやと自分を納得させた。
幽閉されているけど、塔の半径2kmぐらいは監視付きで出歩ける。
魔力の制御を独学で覚えたからかな。
同情した監視役の心使いか……それとも怒らせないようにしたいのか。
どっちでもいいけど。
「うにゃーん」
最近やってくるトラ柄の子猫。
怪我を治療してから懐いてくれた。
「また来たの?今日はご飯食べてみる?」
スープの残りに水を入れたような味だから大丈夫だと思うの。
多分、ユリが使用人の食べ物を持ってきてくれている。
有るだけでもありがたいのよ。
お腹が空き過ぎて思わず食べた雑草は、苦くて食べられたものじゃなかったし。
そろそろ、城の外に出たいな。
こんな所に居たって死ぬのを待つだけ。
「テス様。王がお呼びです」
初めてユリとは別の使用人がやってきて、王の間へ通された。
「お前の嫁ぎ先が決まった。ドリスの獣王国だ。逃げたりしたらアリステ王国を危険に晒すと思えと王が仰せです」
王がいない王の間で、大臣らしいお爺ちゃんに言われる。
この城を出られるなら、なんでもいい。
「承りました。どこへでも参りましょう」
「テス様!なぜ承諾なんてなさったんです?!」
顔を真っ赤にして怒るユリ。
ドリス獣王国は建国して1000年の歴史がある。
王国には獣人と人間、亜人が住んでいて、獣人が治める国。
少数派の人間は獣人たちにとって食糧か奴隷だと言う噂。
「ついて来なくていいのよ。私1人でも」
「ついて行くに決まっています!」
何を言っても「行く!」と言い張るユリと一緒に、馬1頭を与えられてドリスへ向かう。
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