妬きリンゴ

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   思った通り、先輩は戻ってこなかった。  焼きリンゴ、できたのに。  ひとりでアルミホイルを開きたくない。甘い香りのリンゴを見たら、きっと私は嫉妬するから。  誰も悪くない。何も知らず、ひとり隠れて甘くとろけていたリンゴの柔らかさだって、悪くない。  アルミの上から軽く、指でつつく。このまま放っておいて、どんどん焦がして、誰にも気づかれないまま黒くしてやるんだ。  ごめんね、って両手を合わせる。いただきません。  もう、私は妬きません。  
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