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「何コレ!?超美味しいっ!」
その日のディナーで出されたローストベリーを一口食べ、ケイト様はベリー狩の日の夕方とそっくりなリアクションを見せた。
「故郷にはロースト肉のお料理、無かったのですか?」
「いや、あたしの地元にもローストビーフってのがあったよ。でもこんなに美味しく無かった。」
シェフのトーマスさんが泣いて喜びそうなセリフだ。
「ソースも美味しいし、何よりお肉がとっても柔らかい!あたしが今まで食べた奴と別物みたい!」
まぁそれは……実際別物だし……
でもさぁ── ひとしきり感動したところで、ケイト様はちょっと不満そうに私のほうを振り返った。
「何であたしって、いっつも1人でゴハン食べてんの?」
ケイト様はいつもお1人で食事をする。
でもそれは彼女がそう希望したからじゃなくて、貴族令嬢のお食事とは本来、家族かお1人で行うものだからだ。
私は給仕のために斜め後ろに控えていなければならないし、他の使用人にしたってご主人様と食卓を囲むなど言語道断だ。
「前にも申し上げましたが、貴族のお姫様とはそういうものです。」
「ふーん……でも何か、つまんない。」
一緒に食べられたらもっと楽しいのにね──── 少し寂しそうに、ケイト様はポツリとそう言った。
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