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夕食はベリーパイ
たんっ!
パチパチパチ……
「お見事です、ご主人様っ!」
小気味よい音を立てて矢が1フィート2インチの小さな的を貫き、私の拍手と歓声にケイト様はちょっと嬉しそうに微笑んだ。
「ホント凄いです!感動しました!」
「ありがとう。お世辞でも嬉しい♪」
お世辞でも何でもなく、それは私の本心だ。
ケイト様が館に来て2週間ほどが過ぎたある夏の日──── 弓の練習がしたいと彼女が言ったので、私は庭師のカーペンターさんにお願いしてお庭の欅に丸い木製の的をこしらえてもらった。
国王陛下から下賜された魔法の長弓「聖弓ケイローン」を操る彼女の腕前は素晴らしく、50ヤードも離れた小さな的を全く外さない。
おまけにケイローンは「選ばれし者しか射ることが出来ない」と言われていて、現にお城の騎士様たちが幾人も挑戦したが、誰も弦を引くことすら出来なかったのだ。
私の上司、ロチェスター卿がわざわざ異世界から呼んで来ただけの事はある。
「あたし、弓は得意なんだよね。特に遠的が。この距離って50めーとるくらいじゃない?遠的より近いし、この弓使い易いからそれもあるかも。」
50……めーとる、とは果たして何ぞや?
「自慢じゃないけどあたしキュードーブにいるし、いんたーはいにも出た事あるんだよ?」
「はぁ……」
念話を使っても、彼女の話はところどころが分からない。固有名詞は訳せないからだ。
でも、彼女に弓の心得があるという事だけは伝わった。
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