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物腰や言葉遣いから見ても、ケイト様が故郷の世界ではそう高い身分じゃ無かったことは大体想像がつく。
きっと故郷では庶民だったろう。
そんな彼女がこんな高価な香辛料を使った料理を食べ慣れてるなんて驚きだ。ケイト様の故郷って一体どんな所なんだろう?
「子供の使いかお前はっ!出来ないものは出来ない。と、ちゃんとご主人様にお伝えしろっ!」
ご主人様が何かとんでもないことを言い出したら、叱られるのはメイドの私だ。
申し訳ございません──── 私はトーマスさんに、もう1度深々と頭を下げた。
結局その日の夕食は、炒めたバターライスにトマトベースのソースをかけたオリジナルメニューになった。
「ま、しょうがないよね。ところで、さ?」
「はい。何でしょうお嬢様?」
「その『お嬢様』って止めない?ケイトでいいんだけど。」
「はぁ。」
この世に「お嬢様」と呼ばれて喜ばない人間がいるなんて、とっても新鮮な体験だ。
「あと、一緒に食べる。ってダメなの?」
「それはダメです!」
私は即答した。
ケイト様の世界ではどうなのか知らないが、ご主人様と侍女風情が同じテーブルで食事を共にするなんておよそ有り得ない。
「そっか。ダメか。」
お屋敷を見た時はあんなにはしゃいでたのに高価な白磁の食器や銀のスプーンには全く反応せず、カレーライスがダメだった時よりもずっと残念そうな表情を一瞬だけ見せたケイト様は、しかしそれ以上は何も言わなかった。
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