音楽が紡ぐもの

雨がしとしと降るこの日。隣の席の小野勇太が、プリントを解きながらイヤホンで何かを聴いていた。

どうやら私の視線に気が付いたようで、片耳のイヤホンだけ外してこっちを向く。

「何？」

「いや、何を聴いてるのかと思って」

「んー？好きなバンドの曲」

「授業中に音楽なんか聴いて大丈夫？」

私と小野は単なるクラスメイト。仲が良いわけでも、仲が悪いわけでもない。ただ席替えで隣同士になっただけの関係。

この時間は急遽自習になったのだけど、先生がいなくなった途端にスマホから繋がっているイヤホンを耳に付け、堂々と何かを聴き始めたのだった。

「先生いないし大丈夫だろ」

「まぁね」

隣の教室には他の先生がいるからか、教室内はわりと静かだった。スマホをいじってる子や、ヒソヒソとお喋りしている子、寝ている子など様々。

私は窓際の１番後ろの席なので、教室内の様子がよく見える。