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② 歳下同居人は寝不足気味
洸夜にーちゃん、と呼んでいたのは小学四年までだったと思う。
六年生になったにーちゃんからある日、
「オレのことは、こうやサンって呼んで!」
って言われてさ。
そのうち、
「サン付けもいらない。こうやが良い」
だって……。
流石に学校で上級生のこと、呼び捨てできないじゃん……。
でも、洸夜は俺がサン付けすることを絶対許してくれなかった。
まぁ、習慣っていうのは恐ろしいもので、周りの上級生たちに睨まれても俺がにーちゃんのこと洸夜呼ばわりするの止めないし、洸夜の方もそれで喜んでるから(ちなみに他の下級生が洸夜にサン付けしない時は誰から見ても不機嫌でめっちゃ怒り狂っていたようだ.……俺にはそんな姿見せたことないから、聞いた話だけだけど)それがすっかり普通になってしまっていて。
ただ、さ。
中学生になってなんかこう、頭の中に変な映像が浮かぶようになって……。
あれは夏休み、洸夜に勉強を見てもらっていた時……。
場所は海水浴場かな。
人気のない砂浜ってシチュエーション。
素っ裸の洸夜に俺が覆いかぶさってるって幻。
(俺、砂浜で転んで洸夜に乗っかったのかな?)
と考えてから、
(いや、おかしい……)
と思い直した。
頭ン中の俺も素っ裸だっていうことがまず変だったからだ。
海水浴場なら、海パン履いてるはずだろ?
変だよ。っーか、丸出しじゃ変態だろ?
そして。
中二中三って歳をとっていくうちに、その症状はどんどん酷くなっていって。
なんでだ? 週七でマスターベーションしてるのに追いつかない?!
特に洸夜といる時、元気になりたがる下半身を心の中で般若心経唱えて、押さえつけるので必死だった。
洸夜に会いさえしなければエッチな幻を見なくて済むと気付いた頃には、俺の方が夜な夜な洸夜のことをオカズにシコってるって状態から抜け出せなくなっていた。
--あぁ、そうだよ! 俺は変態だよ!!
時が経ち、洸夜は県外の大学へ入学し。
俺は試しに女の子と付き合ってみたりしたんだけど……。
結果。全くの不能だった。(チーン……)
洸夜の顔が見れないのがどうしようもなく辛い。
おっ勃てたチンコ握りしめ涙した夜を何度過ごしたことか。
こんなこと洸夜が知ったら、
「うわ……不潔。流石にないわー」
とか言われるんだろうか。
いや……、洸夜は優しいからそんなこと言わない……かもだけど。
……だけど。
〜〜〜っ!!
もう無理だ! 我慢できない!
だから猛勉強したんだ。
大学。
洸夜と同じとこに入らなきゃ、って。
そして努力は報われて。
久しぶりに電話した。
緊張している俺の耳元で、
『え? 合格したの? 嬉しい』
と、スマホ越しなのにやけにリアルに聴こえて。
実はそれだけで軽くイッてしまったことは内緒だ。
部屋探しもせずに洸夜の部屋に押しかけても、嫌な顔ひとつしないんだからさ、なんつーか、舞い上がるじゃん。
そのせいかまたあのエロい幻が見えるようになったんだ。
もう、抑えきれない。
秘密にしておけない。
って俺の精神が悲鳴を上げるのに時間はかからなかった。
だからさ、告白したんだ。
洸夜限定で視てしまうイケナイ幻のこと。
キモいって言われる心配で死にそうな気分だったけど、意外にも洸夜はニコニコと俺の話を聞いてくれて。
心からホッとした。
「そっかぁ。冬木はオレのことが大好きなんだね。オレもだよッ」
って、頭をぽんぽんしてくれた。
その笑顔があんまり綺麗だからさ。
余計にプレッシャーになったんだ……。
手ェ出せないよ。
……はぁ。
今日も寝不足かな……。
2022.04.24
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