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③ 歳上同居人は童貞処女を恥じています
--……言えなかった。
「ねぇ、そろそろ妄想だけじゃ足りないよ。現実の冬木を早く頂戴」
……てさ。
何でだよ、オレ!
妄想の中ではいくらでも大胆になれるのに!
(これは……アレか。経験値がないと言えないヤツなのかな……)
と、虚しくひとりで入ったバスルームでオレは頭を抱えていた。
股間と後ろが同時に疼く。
風呂場でのひとり遊びが長年の習慣になってしまっていることが更に虚しさを加速させる。
クチクチという粘着質な音が湯気で曇る風呂場に静かに響いた。
多分リビングでくつろいでいるだろう冬木には聞こえないだろうけれど、漏れそうになる声を喉の奥に飲み込んだ。自分の指を冬木の指に置き換えて快感だけを拾うことに集中する……。
目を開けると、全裸で布団に横たえられていた。
「ェエ?! な、何? オレ……」
シュと音を立てて、リビングと布団を敷いているこの部屋を仕切る襖が左右に開いた。
前はベッドを置いていたけれど、冬木が来たからさ、ベッド二つじゃ狭いだろ?
あと……、ベッドだとあの時盛り上がってる最中にゴロッなんて床に落ちるのは興醒めな気がして。
未だにそういう状況に持ち込めていないんだが……。
(ちょっと待って。今のオレ……!)
思わず布団をめくって自分の身体を確認する。
……、うん。真っ裸だよ?
「よかった。目が覚めたんですね。あんまり風呂から上がってこないからどうしちゃったかなって。俺、心配になって。覗いたら倒れてるから」
冬木が目を潤ませながらオレの顔を真上から見下ろしてきた。
信じられないことにオレは、それだけのことで、布団の中で達してしまっていた。
畜生、溜まりに溜まっているせいだ。
布団に挟まれた自分の腹と股間がベッタベタになる感触!
「うぅ……」
恥ずかしいのと気持ち悪いのとでオレが腕で顔を隠すと、冬木がそのオレの腕を掴んで心配そうに顔を寄せてくる。
(ち、ち、近……ぁッ)
「顔が赤い……湯あたりですか。熱がある?)
コツン。
オレの額に冬木のそれが優しく押し付けられた。
これは、恋人に対する優しさじゃない。
幼馴染の、〈洸夜にーちゃん〉に対する優しさ……!?
急に不安になった。
「ふ、冬木。オレ、言ったよな? 冬木のこと好きって」
「!」
冬木が息を飲むからオレは悲しくなってしまう。
すぐに「好き」って言い返せないってことは、オレの好きと冬木の好きは違うってことなんだ。多分。
「ふっ……ふぐ……っ」
オレはとうとう涙を堪えられなくなった。
あぁ。顔もベタベタなら、下半身もベタベタだよ!
「泣かないで、洸夜。どこか悪いの!?」
と、オレの様子に慌てた冬木が布団をめくった!
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