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……なーんて心ひそかにほくそ笑んでいた俺の横で。
洸夜は、オレの目の前にいる女子どもに、
「ごめんね話してるとこ。でもオレ、冬木と話したいから、席、変えてくれない?」
と、とびきりの笑顔で(あっち行けよ。ブスが)と言っているところだった。
ちなみに( )内は心の声ということで理解してもらいたい。
女子たちは会話に(俺は会話したと思ってもいなかったが)割り込まれたにも関わらず、気を悪くした様子は皆無であっという間に去っていった。
合コンのメンツ集めはもういいんだろうか。
ま、どうせ俺は行かないんだから、いっか。
昔から薄々分かってはいたけど、洸夜は女……俺に近づく女に冷たい。
いつもニコって言うから、言われた方は気づかないけど、俺には笑顔の裏の感情までわかる。
洸夜とそういう関係を深め始めている今、特に、そういう彼の感情が手に取るようにわかるようになった。
もし、洸夜の中に俺が溶け込んでしまえれば、もっと洸夜のことわかるようになるのかな。
……イイな、それ……。
ヨダレが垂れそうになった口元をぬぐう。
ますます変態になってるな、俺。
そんな俺の心の中までは読めていないだろう洸夜は、オレに心底からのニコッを見せてふわりと隣の椅子に座る。
「今日さ、帰り、買い物に付き合ってくれない?」
さらっと言われて、オレは反射的に聞いてしまった。
「イイですよ。何を買うんですか」
「えっと……」
もじもじもじ……。
う……。
可愛いが過ぎるぞ、洸夜。
「ん?」
と、洸夜の顔に自分の耳を寄せてみる。
言うのが恥ずかしいなら耳打してって合図のつもりだったんだ。
洸夜は躊躇いながら、そんな俺の耳に顔を寄せて、
「……毛抜き」
と、小さな声で言った。
「へ?」
予想外の買い物だ。思わず顔を覗き込んで聞き返すと、パァっと洸夜の白い頬に朱が走った。
「脇はっ、人目に触れることもあるから、変に思われないくらいにやるけど、下の方は冬木に幻滅されたくないから。ちょっとこだわってるんだ。どれくらい抜いて、どれくらい残すとか、さ」
と目の端を赤らめながら早口になって告白した洸夜の色っぽいことといったら!
もぅ、監禁しちまうぞ。
ってくらい、可愛いかった……。
洸夜の可愛いらしさ妖艶さは、最近、他の奴らが気づくくらいになっていて、心の狭い俺はそれが心配で仕方ない。
歳上なのにさ。
歳上だからか?
エロい、がはみ出てるんだよ……。
2022.04.25
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