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数日後。
どこからどう見ても大邸宅な屋敷から出てきた俺と洸夜。
先日俺が振るってしまった暴力についての謝罪をしていたのだ。
(大邸宅はご友人の祖父の家で、大学入学を期に同居させてもらっているのだとか)
洸夜の友人がまさかあんな大金持ちだとは知らなくて俺は内心結構びびっていた。(二人が食事で入った料亭を見た時気づくべきだったかもしれないが、その時はすっかり頭に血がのぼっていた)
勘違いで殴ってしまったことを平身低頭で詫びた俺たちを快く許してくれたあたりやっぱりさすが洸夜のお友達というべきか、懐の広いひとだ、という印象を受けた。
そして俺はすっかりいじけている。
金もあって、鷹揚で。
ああいう男の方が洸夜にはふさわしいんじゃないかって。
黙ったままでいたら、
「なぁ、何考えてる」
と洸夜が聞いてきた。
「いえ、何でも。それよりすみません……まさかお友達だったとは。俺、勘違いして。馬鹿ですね」
しゅん、と項垂れた俺の背中に洸夜の手が触れた。
馬鹿な俺はそんな軽い接触だけで体の奥を熱くさせてしまうのに。
「オレが冬木以外とどうにかなれると思う? さっきまでいたあの広い和室でだって……オレは……」
と、目を伏せた洸夜長いまつ毛が細かく揺れている。
そう、このひとは真剣に謝罪しなきゃいけないその時でさえ……。
でもそれって単にそういう習慣になってるだけじゃないの? なんていじけてる俺はひねくれて考えてしまう。
「謝罪しなくちゃいけない時まで、あんな妄想に夢中になってるなんて、流石に良くないと俺は思いましたよ」
(股間は反応して今でも痛いけど)
意識して重々しい口調で答えた俺を、洸夜は目を見開いて見た。
意外だったみたいに。
俺はいつだって洸夜に夢中だよ。
今だって人目を憚らず押し倒したいくらいだ。
でも、自分が洸夜にふさわしい人間だって思えるほど自惚れてはいない。
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