キモチ味

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「一人にしない。血繋がってなくても、俺の娘なのは変わりないからね。それに、血繋がってるとか、繋がってないとか、そういうのって関係ないと俺は思うよ。家族って血の繋がりだけじゃないからさ」  俺がちらっと昌を見ると、昌が意表を突かれたような表情でこちらを見ていた。 「昌の父親になって五年の俺が、偉そうに言えることじゃないけど。でも昌を一人にしないことが、今の俺にできないことだから」  慌ててそう言うと、またカーテンに視線を戻す。体を縮こませ、何もしていないと何だかじわじわと負の感情に侵食されそうな気がして、口をもどもごさせた。普段使わない筋肉を使ったせいで、少し口の中を動かしただけで疲れる。 「……ありがとう、ございます」  俺は昌を見ると「敬語?」と聞く。 「敬語じゃないと、失礼かなって思って。今のは」 「そう?」 「うん」  昌は最後の一口を飲み干すと、マグカップを食卓に置く。  そしてその瞬間、ポロっと何かが零れた。その何かを見て、俺は昌から顔を背ける。俺なんかよりも昌の方がよっぽど辛いはずなのに、俺と同じで平然を装っていたのだ。その感情が、今外にとめどなく溢れだしている。  俺は灰色のカーテンを眺めながら聞こえないフリをする。昌はそんな俺に対して、何も言わなかった。  沈黙が俺たちの間に流れている。
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