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次の日の朝。わいは別の手を考えた、健ちゃんを笑わせるには、やっぱり野球ネタかな。でも、わい野球まったく詳しくないしな……
そこで、朝の授業が始まる前に3組に行ってお調子者の松山将士、マー君に相談しにいく事にした。1年生の時は「マー君」と「ゆたやん」と「わい」でよくふざけた事をしてたんや。
「そんなん簡単やん」
そう言ってマー君は阪神の掛布のモノマネを始めた。
「掛布のルーティーンからや。そしてバットをぐるっと回して、フラフラっとしたところからグリップを出す様にバットを出す」
「うま」わいは純粋に感心した。
「でも、これじゃオモロない。そやからな」
マー君はムッチャ誇張してバット振り回し始めた。
「そして最後は掛布からの…ランディバース!…………そして岡田」
プッ。不覚にも笑ってしまった。
「教えて教えて」
「あ、でも、これ習得するまで10年かかるで」
「10年!!」
「早くても3日や」
「……そうか。そりゃそこまでやろうとすればかかるわな」
わいは納得して諦めた。
結局この日はいい案がないまま授業が始まってしまった。
河路先生が黒板に「じぶんをしょうかいしよう」と大きな字で書く。
自己紹介の紙がみんなに配られた。紙には気球がいくつか飛んでいる絵が書いていて、その気球部分に「わたしの すきなじゅぎょうは……」「2年生がんばりたいこと」なんかが書けるようになっていた。真ん中には好きな絵を描けるスペースがある。
「先生もはやくみんなのことを知りたいので、その紙をつかって自己紹介をしましょう。まずは先生から」
そう言うと先生は自分の事を書いた模造紙を黒板に貼り付けた。
「えー先生は、この白岳小学校にきて5年目です。そして、河路先生といえばコレ! ジャーン!」
と言って先生の机の奥にあったギターを取り出して、ポロンポロンと鳴らした。おーって声が上がって教室がザワザワする。
「なんかギターで弾いてほしいものあったら言ってな。練習してくるから」
「先生、スーパーマリオ弾ける?」
思い切って聞いてみた。
「スーパーマリオか、それはちょっと練習が必要やな。よし、先生の宿題にしてくるわ」
「先生、六甲おろしは? 阪神タイガースの」
一番前の男の子が聞いた。(ごめん、まだ名前覚えてへん)
「弾けんで、それじゃ放課後弾いてやろ」
その後も何人かがリクエストをしていった。
「健ちゃんも何かリクエストしたら?」
「わ、わしはええ。多分言ってもみんな知らんけえのう」
そう言って健ちゃんは黙ってしまった。
「好きな教科は音楽です。あと国語。えー、こんな事先生が言ったらいかんけど、算数が苦手です。だけど安心してや。苦手やから一番分かりやすく教える自信はあるからな。掛け算がんばろうな」
その後も、先生の自己紹介は続いていった。笑い声もあがって、なんか楽しくなって来た。よし、わいも自分の紹介書こう。
えっと、すきな授業は、図工と体育。給食。休み時間っと。2年生でがんばりたいことは…… なんにしよ? ちょっと迷って隣の健ちゃんの紙を見た。そこのは、好きなものは野球とだけ書かれて、他は白紙やった。野球好きなんやな。でも、他の事もどうなんやろ?
健ちゃんが逆にわいの紙をのぞいてきた。
「なっちゃん。給食ええのう。わしも好きな教科、給食にしよ」
と言って書いていく。でも結局、この日はわいも健ちゃんもあんまり進まんかった。
「明日はこの紙を見ながら発表してもらいます。今日できなかった人は宿題です。明日までに完成させて来てください」
先生がそう言ってこの日は終わった。
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