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目が覚めると、私は私になっていた。
女の私。隣には大樹が眠っていて、ぬいぐるみは机の上にある。
自分の顔を触り、起き上がって鏡の前へ。
やっぱり私の顔はよく知っている顔だった。よかった。元に戻ったんだ。
大樹の元へ行き、彼のおでこに軽くキスをした。整った顔は寝顔も美しい。
「ん」
彼がゆっくりと目を覚まして、私を見た。
「おはよう、今日休みじゃなかったっけ?」
寝起きの声でそんなことを言う。
「うん。ちょっと早く起きちゃって」
「そっか。あー、なんか久しぶりに体動かした感じだなぁ」
「久しぶり?」
ベッドに座り、頭を掻きながらあくびを一つ。
「だってさ、俺ずっと休んでたんだからさ」
ぬいぐるみになっていた自分のことを言っているのだろうか。私はあえて何も言わずに彼の話を聞いていた。
「で、どうだった? 俺になってなんか違った?」
「え」
「全部知ってるよ。見てたもん」
「……やっぱり、そうなんだ。うん、大樹になって色々とわかった気がする。私自身のことも大樹のことも。ずっとあなたに迷惑をかけていたんだなって」
ぬいぐるみから見た私はどう映ったんだろう。
「迷惑だなんて思ってないけどさ」
「うん。私って本当に、ダメな彼女だなって思った。もっと大樹にふさわしい彼女にならないとって」
話しているとなぜか段々と涙が出てきてしまい、止まらなくなった。
「泣くなよ」
ティッシュを取って私の涙を優しく拭ってくれる。大樹はやっぱり優しい彼氏だ。
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