恋の操り師

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 今日から私には新しい職務が増えた。  阪急六甲駅の山側が、初めてのデートの待ち合わせ場所だった。約束は九時半だったが、もう十分は過ぎている。梅田からの急行が止まった。祝日なので大量の乗客が降りてきた。 「遅れてごめんなさい。杉浦さん」  遠くからでも目を引く美しさで、私はすぐに山之内すずだとわかった。 「平気です。時間はたっぷりありますから、山之内さん」  彼女は少し口をとがらせて言った。 「デートですから、すずと呼んでください」 「わかりました。僕のことも光平と呼んでください。ちょうど直行バスが来ましたよ」  並んでいた人々の後からバスに乗り込み、パラマウント・スタジオ・ジャパンに向かった。  バスの中で彼女はしゃべり通しだった。 「今日、光平さんに会うのを楽しみにしていたんですよ。それに、PSJにも行きたかったし。オープンしてまだ三週間でしょ。お友達はまだ誰も行っていないので、ちょっと自慢できるし」  屈託のない笑顔に思わず私もつられてしまう。あわてて平常の顔に戻る。人前だ。  入園すると、彼女はミッション・インポシブル・ザ・ライドへと走った。  私はあわてて追いかけた。
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