恋の操り師

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 六甲の駅で、彼女は一人で梅田行きの急行に乗って帰って行った。  少し離れたところからそれを見届けた私は杉浦に声をかけた。 「危なかったですね。杉浦さま」 「ああ、神谷さん。今日は一日中お世話になりました」 「どういたしまして。杉浦さまは私共の結婚相談所のVIP会員さまですから。ただ、私はデイト補助担当の初日でしたので、いたらぬ点をお許しください。山之内すずさまは六十代とは思えぬ美しい方ですが、どうやら、後妻業タイプのようです。七十二歳の心臓の弱い杉浦さまを、走らせたり、ジェットコースターに乗せようとするなんて」 「ああ、たびたびメールで救ってくれてありがとう」 「今度は、もっと堅実な方をご紹介致します」 (了)
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