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公園にて
彼は、自分の手の中にある物をじっと見つめていた。
ベンチに座っていると周りの緑が優しいそよ風に揺れた。
いつもはキッチリと撫でつけられている彼の黒い前髪も額にハラリと風を受けて落ちてきた。
「おーい」
友人が手を振りながらこちらにやってくるのが見え、手を振り返す。
「よう、圭吾。何やってんだよ、もうすぐ昼休み終わっちまうぜ」
グレーのジャケットを手に、ワイシャツの首元を緩めながらドカッと青年の横に座ると、見つめているスマホを覗き込む。
「おいおい、どーしたんだよ、懐かしいなー。女子の間でメチャ流行ってた乙女ゲーじゃんか」
「んー。あのさ俺の兄貴、覚えてっか?」
「おう、お前の双子の兄貴な。お前にそっくりだったけど就職した先で心不全で死んじまったんだっけ」
「このゲーム作ってたらしいんだ」
「げ、じゃあ過労死で大騒ぎになってた会社の社員だったってことか?」
圭吾と呼ばれた青年が頷いた。
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