エスコート必須です

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 大聖堂の両開きのドアが神官達によって開け放たれると先ず現聖王である大神官が現れ、そのすぐ後をミゲルがミリアをエスコートして歩く。  貴賓席の招待客達は簡易の礼で頭を下げたまま3人が自分達の眼の前を通り過ぎていくのを待っている。  静かな聖堂の中に動く3人の衣擦れと僅かに靴音だけが響く。  中央に設えてある大理石の壇上に3人が上がると神官達がクリスタルボウルを鳴らし、それに答えるように招待客達が顔を上げて正面に並んだ聖王達に視線を向けた。  100年以上生きている白いヒゲを生やした老人と、その後ろに並ぶ美しい若者が2人。  ハイドランジア王家特有のラピスラズリの瞳には紛れもなく神聖な金の星。この聖堂に集う世界のトップ達は彼なら次期聖王と言われても納得できるミゲル・ハイドランジア王弟殿下である。  そしてその左腕にエスコートされ立っている少女。まだ少しあどけなさの残る顔に、左右対称に配置された美しい透明なタンザナイトのような青みがかった紫の瞳に紛れもなく浮かぶ神聖な金の星。  今迄名は知らぬ者も多かったが、大神殿で秘匿された聖女がいるらしいという事は公然の秘密とされていて、ほんの最近になって世界中にその名が駆け巡ったミリアンヌ・アークライド嬢。  まるで婚姻式のように仲睦まじく立っている姿に誰ともなく、ほう、と感嘆の溜め息が漏れる。 「これより聖王及び大聖女の承認の儀を執り行うものとする」  聖王様の声が聖堂に響き、招待客と神官達が恭しく一礼をした。
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