平和への感謝

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 神殿の入り口にあたる門の上には見晴台が設置されており、内側から登る事ができるように階段が備え付けられている。  3人と1匹はその階段を登っていく。  普段は誰でも神殿内に祈りを捧げられるように門は開け放たれているが、今日に限っては式典に参加する各国の要人の安全のために固く閉じられている。  平素の神殿があまり威圧感を感じないのは、貴族も平民も気軽に訪れて神殿の外庭のそこここに人影があるからなのだと今更ながら気がついたミリアンヌである。 「人がいないと、神殿もちょっとした要塞みたいに感じますね」  階段を登りながらボソリと呟くミリアにお爺ちゃんが答えた。 「実際、要塞なのよ。神殿をぐるりと囲む壁もかなりの高さでしょ? そして上に人が行き来出来るくらいのスペースがあって、ここで敵を迎え撃つ事が出来るように作られてるのよ」 「え」 「いざとなればフリージア城と神殿とで王都の住人すべてを保護する様に作られてるのよ。今は平和だけど、昔のハイドランジアは周りすべての国が敵だった時代があったからね」  ああ、そうか。そうだった。  そういえばアークライド侯爵領の神殿もマナーハウスも外壁が高く門が強固に作られていた気がする・・・ 「まあ、物見櫓みたいな使われ方をしなくても良いようになったのは聖女や聖王がこの国に産まれるようになってからだからね。王家の側室制度だって、王族の拉致が多かった頃の名残なのよ」 「今はいい時代なんですね」 「そうね」  
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