向日葵の咲く頃

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それからは朗読劇の練習の度に話しかけられた。 「あの、葵ちゃん、ちょっと良いかな?」 「はい」 「ここなんだけど――」 練習の後に勉強もみた。 「ありがと、葵ちゃん」 「良いのよ。私の復習にもなるし」 また、生徒会用の部屋へ荷物を移していると、自室から顔を出して声をかけられた。 「なにか手伝えることあるかな?」 「それじゃ、これを中に入れて置いてもらえる。鍵は空いているから」 「うん!」 その後に別の荷物を持って部屋に戻ると、何故か散らかっていた……。 え、なんで……? 「あ、おかえりなさい」 「こ、これは何事?」 「荷物出して掃除しようと思ったんだけど……あははは」 笑い事じゃないレベルだって。 「……って……」 「え?」 「もう手伝いは良いから出てって……!」 「で、でも……」 それでも、粘ろうとする桜木さんを部屋から押し出した。 「ダイジョウブダカラ」 「はい……」 そして、ドアを閉めた。 笑顔を保てていただろうか。 でも、翌日にも来たので丁重にお断りした。 気持ちはありがたいんだけどね。 「随分懐かれたみたいだね」 「ははは……」 鷲黒会長から何回目かの朗読劇の練習の時に桜木さんとのことを訊かれて話をしたら、からかわれた。 当の本人は何のことか分からないという顔してるのが、なんと言うか……ハズレくじを引かされたかしら。 でも、なんと言うか、憎めないのよね。 これも、彼女の魅力なのかしら。 朗読に関しても、桜木さんは存在感というか、何か惹き付けるものがあり、主役を任された。 通年だったら演劇部が任されてるというのだから、大抜擢だわ。 私は出番が多いわけでも少ないわけでもない当たり障りのない役。 私らしい。 私みたいな、私に相応しい役。 いえ、卑屈になっては駄目よ、私。 生徒会長を目指すのだから。 今は積み重ねる時よ。 高校でも生徒会長になって、私は認められる。 きっと認めてもらえる。 両親から、何よりも―――自分自身から。
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