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「あー!こんな所にいたー!」
「あ……」
しばらく夏の日差しに焼かれてる景色を眺めていると、鷲黒会長が開けたままにしたドアから、桜木さんがコチラを指差していた。
「…………」
「…………?」
威勢よく声を上げておきながら、ただ隣に来て並んで屋上からの景色を眺めだす。
さっきのは独り言というか、心の声のつもりだったのかしら……。
「えっと……さくーー」
「あのね、なんだか、懐かしく思っちゃって」
「懐かしい?」
「うん……」
声を掛けようと思ったら、遮って話し出して、繋げようとしたら、今度は話を切られた。
なんなのよ……。
仕方なく、2人でしばらく景色を眺めた。
けど、落ち着かない……。
「あの……そろそろ良い?」
「いや、それ私が言いたいんだけど!?」
「あ、あれ?」
なんで、あなたが困惑してるのよ。
「前に私が葵ちゃんみたいにしてたら、ただ傍にいてもらったことがあって。その時の真似をしようとしたんだけど」
「あのね……私はあなたじゃないわ―――よ……」
あ……。
言い終わって、ゴトン、と何かが私の中で落ちた。
そうか、そういう事ね……。
「あ、えっと、これは、あ、あれで……――」
「ふ、ふふふふ……あは、あははははは!」
「あ、葵ちゃん?」
突然笑いが込み上げてきた。
久しぶりに、それこそ何年かぶりだろうと思うくらいに、お腹を抱えて笑いたくなった。
ひとしきり笑った。
隣で桜木さんが心配にそうにしてるけど、何も気にならない。
心が何かから解放されて、私の中で何かが変わり、見えている世界はとても色鮮やかに染まりだす。
こんなに、眩しかったんだ……!
「ふぅー、暑いねっ」
「ふぇ、あ、うん、暑い……ね?」
「うん、戻ろう」
「ど、どこに?」
「練習ー!」
そう言いながら、私は屋上のドアに向かって走り出す。
「練習、今日はもう終わったよー!」
「あ、そうなんだ!」
「もう……だから探しに来たんじゃん……」
隣に追いついた桜木さんと目を合わせると私はまた笑った。
桜木さんもつられて笑い出す。
夏の太陽に照らされて、金色の髪が輝きながら笑う彼女を改めて綺麗だと思った。
素直にそう思えるようになった。
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