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「お前さん。何をやっておるのだ…」
背負った籠を下ろし、その老人は男の傍に来た。
「さっき、捥いで来たんだが、良かったら食うか」
老人は男に大きな八朔を手渡した。
「良いのか…。見ず知らずの俺に…」
老人は男に八朔の実を手渡し、
「見ず知らずと言っても、お前さんは既に三日も此処に居る。村のモンは皆知っとるよ」
老人は傍に置いた籠の中に手を入れ、
「そろそろ八朔も終わりだ。良かったらもっとあるぞ」
と男の横に八朔の実を三つ置いた。
「牛も馬も生きてりゃ腹が減る。もちろん人間も同じじゃ…」
老人は籠を背負った。
「良かったら飯を食いに来い。なあに、人まで食う程飢えてはおらんよ」
老人はそう言うと坂を下って行った。
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