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「佐門殿の意志を継ぎ、この道場は私が後を引き受けた」
数十人の門下生の前で兵衛は口を開いた。
「我々が佐門殿の下で学んだモノは剣術では無い。所謂、殺しの技だ…。此処に居る皆が、簡単に人を殺せる術を身に着けてしまった。それは佐門殿が言っておられた様に、どう使うかで善悪が決まるモノだ」
門下生は何も答えず、ただじっと兵衛の言葉を聞いている。
「今日から、お前たちは「十津川衆」と名乗り、その身に着けた力を善の道で役に立てて欲しい」
兵衛は独自にその村の法を決めた。
来る者は拒まず、去る者は追わず。
それを徹底したのは佐門の教えでもあった。
関東から流れて来た者も多く、村独自の文化を持たず、言葉に訛りも無かった。
それ故に、何処の出身の者かわからず、その後数百年間、その十津川衆の習わしは継承されていく事になる。
しかし、佐門が言っていた様に、時が経てば善悪はその意志からは大きく外れ、十津川衆は暗殺者としての仕事を受ける様になって行った。
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