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「酒は好きか…」
囲炉裏端に座る老人は酒を出して来た。
男はそれを断った。
「酒で後悔する人生を送って来た。それ以来酒は飲まない事にしている」
老人はそれを聞いて頷くと、自分も酒を飲むのを止めて湯飲みにお茶を注いだ。
「名前は訊いてもいいか」
老人は男の湯飲みにお茶を注ぎながら言う。
「佐門だ。荒木佐門…」
「荒木佐門…。お武家様か…」
男、佐門は首を横に振る。
老人はその佐門の様子を見て、それ以上訊くのを止めた。
土間の戸が開き、老婆が顔を出す。
「包丁の切れが悪くて軍鶏が捌けん。包丁を研いでくれんか」
老婆は手に包丁を持ったまま老人に言う。
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