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「良い包丁だ…」
佐門は微笑むと、まな板の上に置かれた軍鶏の首にその刃先を当てて軽く切り落とした。
「ほう…。こりゃ大したモンだ…」
佐門の後ろで腕を組んで見ていた老人は言う。
老婆は佐門から包丁を受け取ると、礼を言い、軍鶏を捌き始めた。
佐門は振り返り、老人に、
「他にも切れ味の落ちたモノはないか…」
と訊いた。
老人は、入口に掛けた鉈を指差す。
「鉈と鎌、鋸だな…」
佐門は微笑むと、
「全部持って来てくれ…。一気にやってしまおう…」
そう言い、壁に掛けてあった鉈を手に取った。
そして、鉈の刃先をじっと見て、研ぎ始めた。
「俺は鍛冶屋だ。これくらいの事は朝飯前だよ」
そう言うと暗い土間で鉈を砥石の上で研いでいった。
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