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篠ノ井は言葉を続ける。
「二点目、服装に関してだ。今日は猛暑日で気温が三十六度もある。それなのに彼女は厚着をしていて、暑いなんて表情は微塵も感じられなかった。これもDSSの弊害と言えるだろうね。AIにとっては暑さや寒さを感じる必要性はない。でも人間としては、この季節に冬着は変だ。この辺りも堤さんが無意識に学習し、AI自身にとって必要のないものを取捨選択した結果だろうね」
「AIが人間として過ごすにはこういった障害が出てくるのは必然と言えますよね」
「そうだね。ところで、飯野さん、人間が夢を見るのはなんでだと思う?」
飯野は顎のあたりに手を当てて、考える素振りをした。
「現実で起きた出来事の情報を整理するためですか?」
「その通り。人間が夢を見る理由は諸説あるが、おおよそその通りだと思う。人間は日常で起きたことの情報を整理するために夢を見る。でも、AIは夢を見る必要がない。すぐに情報を記憶することができるのだから……。だからAI自身が勝手に学習し、夢をみるというプログラムを消してしまう。そうしてDSSになるんだろうね。きっとDSSはAIにとっては至極真っ当な事なんだろうね」
「それを治療するために私たちがいるんですよね」
篠ノ井は飯野の方を向いて頷く。
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