第1章

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************  「ーー解散」  「ありがとうございましたー」 帰りのホームルームが終わり、鞄に教科書や筆記具などを詰め込んだクラスの生徒たちが次々と教室の外へと出て行く。自分の席でプリントや筆記具を鞄の中に入れる。  「日直の仕事手伝うよ」 「ほんとに?ありがとう!」 「いいよー。そういえば今日さあ…」 黒板にチョークで書かれた文字を2人の女子生徒が消しながら楽しそうに会話している。   (あー、そういえば明後日日直か俺)  本日の日直当番は瀬田さんで明日は草沢(そうさわ)という苗字の男子生徒が日直だから必然的に当番が回ってくる。   (明後日バイトじゃねえよな、日直だとバタバタなんだよな) 確認しておこう、と俺はズボンのポケットからスマホを出し画面を開き操作する。明後日はバイトではなかったので一安心だ、よかった。  「翔太帰ろーぜ」  スマホを再びポケットに入れていると同じくホームルームが終わり鞄を肩に引っ掛けた亮と直哉、それから陽貴が教室内に入り自分の席へとやってくる。  「おー」  「今日はまた夜バイト?」 「うん、18時から22時まで」  「へー、大変だな」  鞄を肩に掛け席を立ち、俺達はまだ賑やかな教室を後にした。     ************    「じゃあまた明日なー」 「バイト頑張れよ」 「うん」    バイト先へ向かうので方向が別になる亮と直哉と別れる。手を軽く振る亮と直哉に向け手を振ったあと、俺と陽貴は再び歩き始めた(陽貴はバイト先方面に家があり方向が一緒な為)。  「陽貴、もう新しい学校は慣れた?」 「慣れたよ。ていうか俺の親転勤族でもう何回も転校繰り返してるから特に変わりないかな」 そう陽貴がニコッと微笑みながら話した。…慣れたみたいでよかったけど、転校繰り返すの嫌じゃないんだろうか。親の仕事の都合とはいえ  「すぐ転校ってなんか辛くない?友達できてもすぐ違う所って」 「いや、大丈夫だよ。それにほら、今はスマホがあるから電話もLINEもできるし」  「まあ確かにな」  「そうそう。そんで今週の日曜も元の高校の友達とも会う予定だし」  楽しみ、と機嫌良さげに話す陽貴を眺め俺はほっとした。陽貴が言葉を続ける。  「いろいろ気にかけてくれてありがとね」  嬉しそうに言われ、俺も「うん」と言葉を返し軽く笑った。
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