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「ーーあ、猫居る」
「え、どこ」
それから俺は陽貴と会話しながら道を歩いていると、陽貴がそんな事を言う。ほら、と陽貴が指を差す方向を見ると少し離れた道の前方を1匹の三毛猫が歩いていた。
「猫かわいいよな」
「うん」
陽貴は猫が好きなのかな?
嬉しそうに呟く陽貴を見て俺は聞くことにした。
「陽貴って猫好き?」
「好きだよ、家で飼いたいくらい。でも俺の家マンションだからペット禁止になってるし飼えないんだ」
「あー、それは仕方ないよな」
陽貴と会話していると三毛猫は方向を変え細い路地道に歩いていった。
「猫行っちゃった」
「そうだな…」
猫が去って行った場所に着き、そこから路地道を眺める。路地道は三毛猫もおらず人通りもなくひっそりとしていた。
「……」
(そういえば、あの猫は今どうしているだろうか。この路地道にもいないし、あの白いーー)
「…翔太くん?どうかしたの」
「えっ」
陽貴に話を振られ俺ははっとする。陽貴に目を向けると不思議そうに俺を見ていた。
「なんか考え事?」
「あ、うん。いや、さっきの猫どこ行ったのかなーって」
「確かにね。どっかの家の敷地に入ったのかもなあ」
「あー、そうかもな」
陽貴と会話しつつ再びさっきの事について考える。
(…ていうか、白い猫ってなんだ白い猫って。しかも今その猫はどうしているのかって何で俺はそんなことを考えた?まるで前に何回もこの路地道でその白い猫に会っていたみたいな…)
そんな事実全くないはずなのに、なんだろうこの既視感は。
「そういえば翔太くん、バイトの時間は大丈夫?もう17時半前だけど」
「えっ、もうそんな時間?やべえ遅刻する!行くわ」
陽貴に言われバイトの時間も迫っていた事もあり、違和感を拭えぬまま俺と陽貴はその路地道を後にした。
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